ヒト・チンパンジー・マーモセットのMRIによる発達比較研究が掲載されました(共同研究)なお、論文の図が雑誌の表紙に採用されました!

Sakai T, Komaki Y, Hata J, Okahara J, Okahara N, Inoue T, Mikami A, Matsui M, Oishi K, Sasaki E, Okano H: Elucidation of developmental patterns of marmoset corpus callosum through a comparative MRI in marmosets, chimpanzees, and humans. Neuroscience Research, 122, 25-34, 2017.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168010217301025

表紙

マーモセット、チンパンジー、ヒトの脳梁の発達を比較

家族で養育を行う霊長類は乳児期から子ども期にかけて神経の成熟が著しい

脳梁は左右の大脳半球を結ぶ最大の神経線維の束白質路であり、感覚、運動、認知などの多様な神経機能と関連しています。金沢大学国際基幹教育院の松井三枝臨床認知科学教授らはヒトの脳梁発達研究を行ってきました。この度、酒井朋子 ジョンズ・ホプキンス大学海外特別研究員を中心とする慶應義塾大学、ジョンズ・ホプキンス大学、中部学院大学の霊長類研究者と共同で研究グループをくみ、世界で初めてマーモセットの脳梁を真横から見た断面積がどのように発達していくのか、その過程を明らかにしました。調査の結果、マーモセットでも、チンパンジーやヒトと同様に、乳児期に脳梁の断面積は急速な成長を見せ、その後ゆっくりと変化することがわかりました。一方で、母親以外の家族も子育てに参加するマーモセットとヒトは、養育期に母親と子どもの密接な関係が続くチンパンジーと大きく異なりました。マーモセットとヒトでは、チンパンジーよりも、乳児期後半から子ども期にかけて、脳梁の断面積が大きく増加することが明らかとなりました。特に、マーモセットの脳梁の断面積は大きく成長することがわかりました。これらの脳梁の発達の違いは、人類進化に伴う養育や社会行動の進化的変化と関連していることが示唆されました。論文は2017年9月1日、Neuroscience Research誌に掲載されました。

新学術創成研究科融合科学共同専攻の博士前期(修士)課程の募集要項が出ました

http://gsinfiniti.w3.kanazawa-u.ac.jp/

平成30年4月からはじまる大学院です。

事項 日程
公募開始 平成29年8月下旬
出願資格認定申請期間 平成29年10月16日(月)~20日(金)
出願期間 平成29年10月30日(月)~11月2日(木)
試験 平成29年11月18日(土)
合格者発表 平成29年12月11日(月)

一般誌にコメント掲載されました

小学館が企画したもので健常者における神経心理機能の測定を有名人数名に試みられました。その一部の結果(本人同意のもと)と取材時コメントが載りました。一般読者向けにかいつまんだ一部が紹介されているといったもののようです。ある程度年取ると誰しも感じる健常者の物忘れについて焦点が当てられていると思われます。

認知神経科学会学術集会のシンポジウムで口演をいたしました

2017年7月29-30日に慶應義塾大学で開催されました。2日目にシンポジウム「神経心理学的検査」があり、その中の演者のひとりとして登壇いたしました。精神疾患を対象とした話をし、ケースを通した意義に関していろいろ討論でき有意義でした。他の先生のお話は、心理学者から、小児神経学領域から、てんかん外科治療前後の検査についてでそれぞれ興味深く拝聴いたしました。

日本光脳機能イメージング学会で研究発表をいたしました(共同研究者)

首都東京大学の續木大介特任准教授が代表で発表いたしました。この学会ではポスター発表者全員のフラッシュトークがあり(演台での口頭2分の説明後、ポスターセッション)、全体を聴衆が垣間見ることができるのは良かったです。

續木大介, 保前文高, 多賀厳太郎, 渡辺はま, 松井三枝, 檀一平太: 小児脳MRIを対象とした頭表ランドマークと脳特徴点の対応に関する検討-代数的記述および幾何的解析を用いて-. 日本光脳機能イメージング学会 第20回学術集会, 2017, 7, 15, 東京

脳発達論文が掲載されました(共同研究)

Tsuzuki, D., Homae, F., Taga, G., Watanabe, H., Matsui, M., & Dan, I. Macroanatomical landmarks featuring junctions of major sulci and fissures and scalp landmarks based on the international 10-10 system for analyzing lateral cortical development of infants. Frontiers in Neuroscience, section Evolutionary Psychology and Neuroscience, 11, 394, 2017, doi: 10.3389/fnins.2017.00394

ヒトとチンパンジーの脳梁比較論文が掲載されました(共同研究)

チンパンジーの脳梁の発達様式を明らかに:

ヒト特異的な言語、数概念に関わる神経連絡の成熟では乳児期が鍵となる

脳梁は大脳半球を結ぶ最大の白質路であり、感覚、運動、認知などの多様な神経機能と関連しています。金沢大学国際基幹教育院の松井三枝臨床神経心理学教授らはヒトの脳梁発達研究を行ってきました。この度、酒井 朋子 ジョンズ・ホプキンス大学海外特別研究員(元霊長類研究所大学院生、研究員)、三上 章允 中部学院大学教授(元霊長類研究所教授)、鈴木 樹理 霊長類研究所准教授、宮部-西脇 貴子 霊長類研究所助教、友永 雅己 霊長類研究所教授、濱田 穣 霊長類研究所教授、松沢 哲郎 京都大学高等研究院教授、岡野 栄之 慶應大学教授、大石 健一 ジョンズ・ホプキンス大学Associate Professorと共同で研究グループをくみ、世界で初めてチンパンジーの脳梁の正中断面積の発達過程を明らかにしました。その結果、脳梁の上方に位置し、行動制御、言語記憶、数概念に関わる脳梁吻側体部(rostral body)において、ヒトでは乳児期にチンパンジーよりも大きく増加することが見出されました(図4)。一方、脳梁の前方に位置し、注意制御に関わる脳梁吻(rostrum)において、チンパンジーでは子ども期にヒトよりも大きく増加することが明らかとなりました(図4)。この研究成果は、2017年6月27日(アメリカ東部標準時間)に、PLOSONEの中で報告されました。

概要1

私たちヒトの脳が生後初期にどのように成長するのかを理解することは、神経科学や人類学の分野では、重要なトピックの一つです。また、ヒトとヒト以外の霊長類における脳構造の発達様式を比較することは、ヒトの高次脳機能の進化的変化を紐解くうえで欠かせません。

本研究では、脳梁の正中矢状面の発達様式に着目しました。脳梁は大脳半球を結ぶ最大の白質路であり、全ての哺乳類にあります。脳梁は、脳領域間の神経連絡のトポロジーを表現し、感覚、運動、認知などの多様な神経機能と関連しています。よって、脳梁の発達を調べることで、各脳領域の神経連絡の成熟過程を推定することができます。

先行研究から、ヒトでは、脳梁の正中矢状面が乳児期の急速に拡大し、それ以降比較的ゆっくりとした変化を示すことが報告されています。一方、チンパンジーでは、出生後6歳~54歳(子ども期~老年期)の個体を対象とした横断的磁気共鳴画像(MRI)研究により、脳梁の正中矢状面が子ども期から成体期にかけてゆっくりと変化することが報告されていますが、乳児期に関する発達はまだ調べられていません。この横断的研究による知見を確証するためには、生後6歳以前(子ども期以前)のチンパンジー個体を対象とした縦断的研究を行う必要がありました。

そこで、本研究では、4個体(アユム、クレオ、パル、ピコ)の子どもチンパンジーを対象に、MRI法を用いて、出生後1.8ヶ月~6歳(乳児期~子ども期)の脳梁の正中矢状面における7領域(図1、2)の発達的変化を縦断的に追跡しました。その結果、チンパンジーの脳梁全体は、ヒトと同じように、乳児期に急速に拡大し、子ども期にはゆっくりと変化することが見出されました(図3、4)。

その一方で、チンパンジーとヒトにおける大きな違いもありました。一つは、脳梁の上方に位置する脳梁吻側体部(rostral body)において、ヒトでは乳児期にチンパンジーよりも大きく増加することが見出されました(図4)。二つ目は、脳梁の前方に位置する脳梁吻(rostrum)において、チンパンジーでは子ども期にヒトよりも大きく増加することが明らかとなりました(図4)。

rostral body は内側前頭前皮質と前運動皮質を結ぶ神経線維の投射を受け、行動制御、言語記憶、数概念に関わることが報告されています。一方、rostrumは眼窩前頭皮質と背外前頭前皮質を結ぶ神経線維の投射を受け、注意制御に関わることが報告されています。つまり、チンパンジーとヒトにおけるrostral bodyとrostrumの発達の違いは、人類進化に伴う脳システムの進化的変化と関連していることが示唆されました。

http://neuropsychol.w3.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/figuresPLOSONE2017627.pdf

書誌情報

【DOI】10.1371/journal.pone.0179624

Tomoko Sakai, Akichika Mikami, Juri Suzuki, Takako Miyabe-Nishiwaki, Mie Matsui, Masaki Tomonaga, Yuzuru Hamada, Testuro Matsuzawa, Hideyuki Okano, and Kenichi Oishi. (2017) Developmental trajectory of the corpus callosum from infancy to the juvenile stage: comparative MRI between chimpanzees and humans. PLOSONE, 1-22.